1.顎関節症
A.顎関節症とは
口を開けたり閉じたりするときに下顎が左右にずれたり、顎の関節付近でカクカクとかガクガクと音がしたり、痛みのでる病気です。酷くなると口が開かなくなったり開けた口が閉じなくなったりすることもあります。また、症状は顎関節部だけでなく偏頭痛や耳閉感、めまいといったメニエル氏症候群や自律神経失調症に似た症状がでることも多く、耳鼻咽喉科や神経内科等に受診されることが多いようですが、顎関節症状を伴う場合は顎関節症を疑っても良いでしょう。リウマチの場合も同様の症状がでることがあります。顎関節症は自然に良くなるものもありますが、大半は症状が出だしてからしばらくして症状が消えて良くなったように見えても、実際は進行して悪くなっていることが多く、専門医のいる歯科医院、大学病院等で検査を受ける必要があります。

B.好発性別および年齢
男性に比較して女性に非常に多く、下記の年齢に多い。
6歳前後 乳歯と永久歯の生え替わりの時期のため一時的に噛み合わせが悪くなって起こる。治療する必要のないことが多い。
14歳前後 下顎の成長時期のため骨と筋肉の成長のずれによって起る。
20歳前後 顎の骨の成長が悪いためや、受験や社会人になってのストレスによるものも多い。  
40歳前後 緊張性頭痛や更年期障害との鑑別が必要
高 齢 者 かみ合わせの低すぎる義歯やリウマチとの鑑別が必要

C.原因
かみ合わせ、歯並び、顎の発育不全、ストレス等多くの原因が考えられるがはっきりした原因は不明。私の治療してきた患者さんのデ−タからいえることは現代人の食生活が変化して、固い食品を食べなくなってきているため、顎の発育が悪く小さくなって歯並びが悪くなったり、噛むために使用する筋肉の動き悪くなっていることや、姿勢が悪いために下顎が後方にずれたり、ストレスからくる噛みしめにより顎関節に負担が掛かることなど多様な原因が考えられます。また、日本では不適切な歯科治療(低い冠や入れ歯、安易な歯牙削合等)も原因の一つと考えられます。

D.検査法
検査は問診票、筋診査、レントゲン、筋電図、MKG(シロナソグラフ、バイオ・パック等の顎の動きを見る器械)等を行い、それらを総合的に判断して診断を下します。

E.治療方法
当院での治療方法は顎の運動と咬合挙上床(バイト・プレート、バイト・プレーン、テンプレートなどとも呼ばれる)を用いて行います(ほとんどの患者さんはこれだけで症状の改善がみられます)。痛みがひどい場合には、顎関節の中に麻酔をしたり、関節の中を洗浄したりすることもあります。手術が必要な患者さんは数%以下で、その場合は、大学病院等の手術のできる先生に直接依頼します。 精神的なストレスも原因になることがありますが、この場合心療内科や精神科の先生に依頼することもあります。 顎関節症の治療は時間が掛かります、一年以上掛かることも多く、症例によっては五年以上掛かることもあります。治療を始めたら症状が安定するまでは中断することなく定期的に治療・検査を受けることが必要です。